トップコラム「一度不調になると、そのまま辞めてしまう」——休職ゼロなのに離職が止まらない会社の話

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トップコラム「一度不調になると、そのまま辞めてしまう」——休職ゼロなのに離職が止まらない会社の話

「一度不調になると、そのまま辞めてしまう」——休職ゼロなのに離職が止まらない会社の話

Person at a desk holds their head in frustration with an open laptop in a bright office.

株式会社マイシェルパ 営業の村田です。今回は、弊社カウンセラーの吉田さんに「最近増えている相談のパターン」について聞いてみました。人事の方から寄せられる相談の裏側に、何が見えているのか。現場の話をそのまま語ってもらいます。

吉田 哲久(カウンセラー)
株式会社マイシェルパ / 公認心理師・臨床心理士

精神科クリニックに10年勤務し、年間1,000件を超えるカウンセリングを担当。現在は株式会社マイシェルパ カウンセリング部に所属し、法人担当者に向けたメンタルヘルス施策の助言や研修を行うほか、個人向けのカウンセリングや心理検査も実施している。

休職ゼロなのに、人が辞めていく

最近、似たパターンのご相談がすごく増えているんです。ちょっと一つ、具体的な話をさせてください。

ある会社の人事の方から相談を受けたときのことです。業績は順調で、黒字。事業も伸びている。でも20代・30代がポロポロ辞めていくと。「うちは採用より、今いる人の離職防止を何とかしたいんです」って。採用コストをかけて人を入れても1〜2年で辞めてしまう。入っては辞め、入っては辞めで、人事がずっと採用に追われている状態だと。

それで私、最初に聞いたんです。「休職者はどれくらいいますか?」って。そしたら「うちは休職者はあまりいません」って返ってきました。

……この答え、実はすごく気になるんですよ。
普通に聞くと「じゃあメンタルの問題じゃないのかな」って思いますよね。でも話を聞いていくと、その方がぽつりと言ったんです。「一度不調になると、休職せずにそのまま辞めてしまう人が多いんです」って。

「突然辞めた」の裏側で起きていたこと

ここなんです。休職者がいないから、外から見るとメンタルヘルスの問題がないように見える。でも実態は逆で、休職という”ワンクッション”を経ずに、いきなり退職届が出ている。人事の方は「突然辞めた」と感じているんですが、本人の中ではたぶん何ヶ月も前から積み上がっていたものがある。

専門的には「プレゼンティーズム」って言います。出勤はしているけど心身の不調でパフォーマンスが落ちている状態。これがじわじわ長く続いて、ある日「限界」を超えてしまう。周囲から見ると突然でも、本人にとっては最後のひと押しだった、というケースです。

その会社でも、人事の方は「なんとなくおかしいな」とは感じていたんですよね。最近クリニックの受診者が増えてきたとか、適応障害の診断書が出るケースが目立ってきたとか。でも、受診が増えてきた段階って、実はかなり進行した状態なんです。受診に至る人の背後には、不調を感じながらもどこにも相談できていない人がその何倍もいる。氷山の一角って言うと大げさかもしれませんが、構造としてはまさにそうなんです。

で、決定的だったのが——社長がある日「適応障害の診断書、最近増えてきたよな」ってぽつりと口にしたらしいんですよ。経営層の口から出た。そこで人事の方が「このままじゃまずい」と。

ただ、何をすればいいかがわからない。ストレスチェックは法定義務だからやっている。でもそこから先の対策は特にない。休職者が出たら部署異動で対応する、という感じで。

これ、悪気があるわけじゃないんですよね。何かしなきゃとは思っている。でも人事の方って採用も労務も研修も全部やっていて、離職が起きればその穴埋めの採用にも追われる。「不調が顕在化する前にケアしたい」と思っていても手が回らない。それは仕組みの問題であって、人事の怠慢じゃないんです。

ただ、その方と話していて一つ印象的だったことがあって。「予防」って言葉を自然に使っていたんですよ。「休職してからでは遅い」「辞める前にキャッチしたい」って。この感覚が芽生えていること自体、実はすごく大きな一歩です。

まず一つ、声が出る経路をつくる

正直なところ、「何をすればいいのか」の前に、「自社で今、何が起きているのか」が見えていないケースがほとんどだと思っています。

離職が多いのはわかっている。不調者も増えている気がする。でも、それがどこで・なぜ起きているのかが掴めていない。辞めた人の本当の理由もわからない。在籍している人が何を抱えているかも見えない。そういう状態で「対策を立てましょう」と言われても、正直どこから手をつけていいかわからないですよね。

だからこそ、最初の一歩は「情報が入ってくる状態をつくる」ことだと思うんです。大掛かりな制度を整える、とかではなくて。従業員が何かを感じたときに、それが社内のどこか(あるいは社外でもいい)に出てくる経路が、一つあるかどうか。

今は「不調を感じても、誰にも言えず、限界まで我慢して、ある日辞める」という流れになっている。この流れのどこかに、声が外に出るポイントを一つ作るだけでも、見えてくるものが変わると思っています。何が起きているかが見えれば、そこから先は「じゃあ何をしよう」が自然と出てくるので。



吉田さん、ありがとうございました。「休職者がいない=問題がない」ではない、という話は、聞いていてハッとするものがありました。もし同じような状況に心当たりのある方がいらっしゃれば、何かのヒントになれば幸いです。

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