コラム
ストレスチェック、集計して終わりになっていませんか?

株式会社マイシェルパ 営業の村田です。今回は、カウンセラーの吉田さんに「ストレスチェックのその先」について聞いてみました。年に一度、ちゃんとやっている。でもそれが社員の行動につながっているかと聞かれると——思い当たる方は多いんじゃないかと思います。

吉田 哲久(カウンセラー)
株式会社マイシェルパ / 公認心理師・臨床心理士
精神科クリニックに10年勤務し、年間1,000件を超えるカウンセリングを担当。現在は株式会社マイシェルパ カウンセリング部に所属し、法人担当者に向けたメンタルヘルス施策の助言や研修を行うほか、個人向けのカウンセリングや心理検査も実施している。
「形骸化してます」と言える会社ほど、気づいている
ある会社の人事の方と話していたとき、こう言われたことがあるんです。「正直、ストレスチェックは形骸化してます」って。
この言葉、すごく重いんですよね。「形骸化してる」って自分から言えるということは、問題を感じていないわけじゃない。むしろ「何とかしたいけど、どうすればいいかわからない」に近い状態だと思うんです。
実際、その会社はストレスチェック自体はちゃんとやっていました。年に1回、集計もして、役員にも共有している。高ストレスと判定された方には産業医面談を案内している。でも——手を挙げる人はほとんどいない。
「制度としては用意しているのに、本人が手を挙げないから動かないんです」って、その方は少し困った顔でおっしゃっていました。
「測る」と「動かす」の間にある空白
この「面談を受けない」という行動自体が、実はひとつのサインなんですよ。
高ストレス状態にある人は、自分の状態を正確に把握する力——専門的には「セルフモニタリング」と言いますが——が落ちていることが多い。つまり「自分はそこまでじゃない」と思っていること自体が、ストレスの影響を受けている可能性がある。
その人事の方もおっしゃっていたんですが、「本人の自覚がなければ効果が限られる」と。まさにその通りで、ストレスチェックは「測る」ことはできるけれど、そこから本人が「動く」ところまではカバーしていない。この間に大きな空白があるんです。
別の会社では、また少し違う悩みを聞きました。そこはストレスチェックから産業医につなぐ流れ自体はあるんです。でも「産業医面談が30分で終わって、それっきり」だと。
これも非常にリアルな話で、産業医面談は本来「医学的な判断をする場」であって、「じっくり話を聴く場」ではないんですよね。30分で就業上の意見を出すのが産業医の役割。だからそこに「継続的に話を聴いてほしい」というニーズを乗せること自体に、構造的な無理がある。産業医が悪いわけじゃなくて、そもそも求められている機能が違うんです。
ストレスチェックに関して企業の状態を整理すると、だいたい3つの段階があると思っています。まず「実施している」段階。法律で決まっているのでここはクリアしている会社が多い。次に「結果を把握している」段階。集計して役員に報告するところまではやっている。でも、「結果を受け取った本人が、次の一歩を踏み出せている」」会社は、正直かなり少ないんです。
ほとんどの会社は真面目にやっている。でも、チェックと社員の間に「動線」がない。結果を返して「何かあったら相談してください」と書いてあっても、高ストレス状態の人がそこから自発的にアクションを起こすのは、実はとてもハードルが高い。だって、自覚がないんですから。
人事の方も、そこはうすうす気づいているんですよね。「休職になってから気づく」っておっしゃる方もいて。ストレスチェックの本来の目的は「一次予防」——不調になる前に気づくことなんですが、結果的に二次予防にすらなっていないケースが多い。チェックはしたけど、キャッチはしていない。この差を埋めるのは仕組みの問題であって、人事の努力不足じゃないんです。
その先の設計を、一度棚卸ししてみる
ストレスチェックそのものに問題があるわけじゃないんです。「その先の設計」がまだ手つかずになっている、というだけで。
ストレスチェックの結果と、社員が「ちょっと話してみようかな」と思える場をつなぐ動線——そこにどんな選択肢があるか、考えてみる価値はあると思います。産業医面談とは別の形で、もう少し気軽に専門家と話せる場を持っている会社も、最近は増えてきていますし。
「うちのストレスチェック、集計して終わりかも」と思った方は、まずその先の設計が今どうなっているか、一度棚卸ししてみるところからでもいいんじゃないかと思っています。
吉田さん、ありがとうございました。「やっていると次の一歩につながっているは違う」という話は、ストレスチェックをきちんと実施している会社ほど、ハッとするものがあると思います。もし心当たりのある方がいれば、何かのきっかけになれば幸いです。